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外部メディアに頼らない集客、ユーザサポートの効率化、ロイヤルティの上げ方、ファンの作り方、マイペースに続けるコツなど

※ 追記: 元記事がHacker Newsで話題1位になりました。Thank you!
Hacker News
¥370K ≒ $3,277
本稿では、どうやって一人でここまでサービスを成長させたかについて、惜しまずシェアしたいと思います。あなたのサービスの参考になれば幸いです。もし立ち上げ期にやったことに興味がある方は以下の記事を参照ください:
Inkdrop

概要

  1. 大きなブログメディアに掲載される必要はない
  1. 解約率がとても低い理由はユーザのこだわり
  1. ユーザフォーラム運営に時間をかける
  1. ロードマップを公開する
  1. 課金ユーザを特別扱いする
  1. 戦略を語る
  1. 競合をすべて無視する
  1. 不完全を受け入れる
  1. (おまけ) 逆輸入的に見せる

大きなブログメディアに掲載される必要はない

Inkdropは2年前に正式ローンチしました。初期ユーザはベータ時代に集めました。今のところ大きなメディアに紹介されたことは一度もありません。おそらく、当初からEvernoteをはじめ似ているアプリは沢山あったからでしょう。広告も一度も使ったことがありません。それらには頼らず、専ら既存ユーザをより喜ばせることに集中しました。並行して、自分のプロダクトやフリーランス生活での上手く行った戦略をブログに書き綴りました。これらの活動が功を奏して徐々に口コミを生みました。
つまりエンゲージメントはほぼ自分自身から作り出しました。その成長は穏やかで安定していて、振り返れば大きなメディアでバズらせるよりもずっと良いやり方でした。バズるとユーザの流入数が超短期的に跳ね上がります。そしてサーバ負荷を急激に高める上に、捌ききれない量の問い合わせが殺到します。サービスは不安定になり、ユーザサポートはボロボロになっていたでしょう。
成果を焦らなくて良いのです。これはイグジットに向かって奔走するスタートアップではないのですから。
ゆっくりやろうや

解約率がとても低い理由はユーザのこだわり

月間の退会した課金ユーザ数の推移。数えるほどしかいない。
顧客はいったん継続課金を開始すると、特に大きな問題に遭遇しない限り概ね何ヶ月も継続して利用する傾向があります。最近のチャーンレート(解約率)は2~3%で、驚くほど低いものでした。ターゲット層である開発者はこだわりが強いため、彼らは熱心に他のMarkdownエディタを何年もかけていろいろ試しています。そして僕のアプリを最終的に選択しました。だからそう簡単に他に移ったり辞めないのでしょう。ちょうど彼のように:
Your application is a life changer. I’ve tried numerous markdown based applications over the years and I’m so pleased to finally find a keeper! Awesome work! — James Lilliott
しかし彼らは常によりよいツールを探し求めています。僕のように、欲しいものを自分自身で作る人がいるぐらいです。ここで安住せず、常にアプリをフレッシュに保つ必要があります。

ユーザフォーラム運営に時間をかける

ユーザフォーラムの統計情報
立ち上げ期は特にユーザサポートに力を入れるべきだと以前にも書きました。それは成長期になっても変わりません。GitHubをフォーラム代わりに使っていましたが、それをやめてDiscourseに乗り換えました。オープンソースで開発されているディスカッションプラットフォームです。高いカスタマイズ性とREST APIのサポートがあります。InkdropとそれをSSO(シングル・サインオン)で統合して、サービス上の誰が投稿しているのか分かるようにしました。今のところ、264個のトピックと1,367個のコメントが投稿されています。そのうち620個のコメントが僕自身です。ほぼすべて海外ユーザとのやりとりです。
このようにユーザフォーラムの運営に多くの時間を割くことは、無駄ではありません。投稿の数が増えるにつれて、それはFAQとして機能するようになり、また自分の意見・考えの記録になります。ユーザは疑問や提案、質問があったらまずググります。そしてフォーラムの該当トピックにたどり着きます — まるでStackoverflowのように。なので彼らはすぐに回答を得ることができるし、僕は同じ回答を何度もする必要がなくなります。最終的には手間が減って他の事に沢山集中できるようになる訳です。

ロードマップを公開する

これは個人開発プロジェクトなので、ユーザのみなさんがサービス終了を危惧するのは仕方のないことです。実際は大企業のサービスだって充分起こり得ることなんですが(ヤフーのkazocの終了は記憶に新しいですね)。しかしその不安を少しでも和らげる方法があります。それはサービスの未来、次に何が来るのかについて語ることです。毎年、僕は以下のようにロードマップを掲げています:
ロードマップを公開するのはサービス購読をより長続きさせる効果もあるようです。彼のように、欲しい機能が実装されるまで期待して待てるからです:
Inkdrop has been my go-to note app for some time now and I’m super pumped to hear about the new features. — Luke Stacey, from The Roadmap vol.3のコメントより
それはアプリそのものをより長生きさせます。だってこういう期待のコメントは僕のモチベーションになりますから :)
秘密主義をやめましょう。プロダクトについて考えている事をどんどん表に出すのです。

課金ユーザを特別扱いする

先述の通り、僕は既存ユーザをより幸せにすることに集中しました。そしてそれがサービスの成長に繋がりました。では、ユーザのロイヤルティ(忠誠心)を高めるために具体的にやったことをいくつかご紹介します。

ユーザフォーラムで星バッジをアイコンに付加する

フォーラムをカスタマイズして、課金ユーザにのみ星型のバッジをアイコンに表示するようにしました。そうすれば課金ユーザかトライヤル中かがひと目で見分けられて、星のついている人を優先的に取り扱えます(結局は全部の投稿にすぐ返信するのですが)。

ロードマップの議論に誘う

フォーラムには課金ユーザしか入れないカテゴリが設けてあります。そこで次のロードマップについて意見を募って議論しました。これは彼らが特別だと感じてもらえるとても良い方法です。その上、彼らは既にコンセプトを理解しているので、とても有意義に議論できます。

プライベート・ベータ配信

新しいモバイル版を作っていた時、課金ユーザにだけベータテストにお誘いしました。彼らはその扱いをとても楽しんでいるように見えましたし、沢山のフィードバックをくれました。驚いたのは、ベータテストに参加するためにトライヤルを手動で終わらせて課金ユーザになった人が数人いたことです。

戦略を語る

個人開発では、作者自身もプロダクトの一部です。作者が多くの人に知られれば、プロダクトも使われる機会が増えます。ブログはあなたのプロダクトを使いそうな人にリーチするための強力な方法です。はい、正直に言うとこの記事も僕のコンテンツ・マーケティングの一環です。Brian Clarkが言うように、なにか「教えられること」を書くのです:
These days, people want to learn before they buy, be educated instead of pitched — Brian Clark
「ここ最近、人々は買う前に学びを求める。売り文句よりも教育を求める。」 — 僕は彼が正しいと思います。僕はモノを売りつけられるのが嫌いです。セールスマンの話は聞きたくないし、プロモーションの記事や広告も見たくありません。それらの情報は役に立たないどころか、本当かどうかすら疑わしいものです。でも僕を幸せにしてくれる人は信じます。彼が言うように、そういう人は一定数います。あなたはどうですか?
何かを教えることは人を幸せにする手近な方法です。有益だからです。あなたは人に教えられる何かを持っているはずです。でももし「ちょっとした参考になる事」よりも、「戦略」について書けたなら尚いいです。戦略について語れる人はそう多くはいないからです。Qiitaを見てください。JavaScriptのコーディングで特定の問題を解決する方法について書ける人は沢山いますよね。でも例えば「フリーランスの報酬額の見積もり方 (How to price yourself as a freelance developer)」という記事はそれよりももっと価値があるでしょう。実際この記事(英語)では1.4万ビューを得ました。
繰り返しますが、作者はプロダクトの一部です。なので、ブログの記事は他の誰かではなくあなた自身のストーリーである必要があります。すると記事を読んだ人は、あなたに興味を持ちます。数人のユーザさんが言っていました — 彼らは僕のプロダクトというよりもむしろ僕自身を応援したいのだと。
自身のストーリーを語ることは、プロダクトの価値を高めます。

競合をすべて無視する

競合を気にする必要はありません。時間の無駄です。あなたは既に目的地を知っているからです。たとえ自分のサービスの機能を他に真似されたとしても、別に気にする必要はありません。なぜならプロダクトについて最も理解しているのはあなた自身であり、それがどう働いてなぜうまく行くのかも一番熟知しているからです。
もし競合を気にしてばかりいると、彼らに影響を受けてしまうし、彼らに負けないことが目的になってしまいます。最初のモチベーションを思い出してください。それはもともと自分の問題を解決するために作ったものだし、別に相手を打ち負かすために作ったのではありません。競合サービスも同様に、彼ら自身が抱えていた問題を解決するのがコンセプトなはずです。僕らは共存できます。ニッチで潰し合っても何も残りません。
みんなはどのツールがベストか語るのが好きです。でもそれはあくまでその人の観点での評価です。人はそれぞれ違う問題や要求を持っています。あなたのターゲットは、あなたと同じ問題を抱えている人です。だから周りなんか気にせず進みましょう。

不完全を受け入れる

プロダクトはまるで生き物みたいです。いつまでも完成しません。どんどん育つほど、やることも増えていきます。まだ完璧じゃないと思っていても、区切りをつけてリリースしましょう。なぜならリリースしてみないと何もわからないからです。リリースするたびに、いつも何かしらユーザから予期せぬ発見が得られます。
今進んでいる道は山あり谷ありです。その中で、例えば大きなバグを見落としていて、それが売上の低下につながることだってあるかもしれません。僕がちょうど最近経験したことです。でもそれはアプリがより信頼(reliable)できるようにするための必要なプロセスだったと考えています。人は完璧ではありません。プロダクトもそうです。恐れずにリリースして、何が起こるのかを観察しましょう。

(おまけ) 逆輸入的に見せる

これは日本でのみ有効な手法です。Inkdropには日本語版がなく、基本は英語での提供です。そして実際に沢山の海外の方々に使って頂いています。この事実は、実は日本では想像以上に高く評価されるようです。
せっかくインターネットで世界中と繋がっているので、もしサービスが地域依存していないのならまず英語で出してみるといいかもしれません。そしてある程度の成果を得たら、「1人の日本人が海外に向けてサービスを作って提供している」というレッテルを利用して日本語で情報発信するのです。まずそういう事をしている人がとても少ないので、単純に面白がってもらえます。やはり同じ日本人が海外に向けて活動していると聞くと、応援したくなりますよね。するとそれが口コミになって、日本からのユーザ登録が増えます。
これは結果論ですが、再現性は高いと思います。よければ真似してみてください。

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