AtCoderの社長のままトヨタ自動車にアルゴリズムグループを作った話 - chokudaiのブログ
ここは知ってる人は飛ばしてください。
AtCoderの社長です。プログラミングコンテストが好きです。Google Hash Code 2022世界一位、TopCoder Open 2012/2017世界二位、ICFPC世界一位5回、などが主なコンテスト実績です。
AtCoderでは、競技プログラミングをスポーツや趣味と捉えた上で場を提供していますが、マネタイズのポイントは、AtCoderのサービス上に多数存在する、アルゴリズムを扱えるエンジニアと企業のマッチングです。
「AtCoderで培った能力がITエンジニアとして役に立つ!」と主張は出来ますが、もちろん、高度なアルゴリズム構築能力は全てのITエンジニアに必要な能力ではありません。様々な領域でAtCoderを評価して頂けていますが、最もAtCoderの能力が活かされるのは、巨大なデータを処理するサービスや、0.1%レベルの最適化が大きく影響するようなサービスです。
今回の案件で、トヨタ内にアルゴリズムグループが新設されましたが、もちろんトヨタは非常に力を活かしやすい会社の1つです。今後AtCoderユーザの有力な就職先の1つとして大きくなることを期待しています。
今回の案件は研究開発に近いジャンルなので、そこに絞って話します。
世の中のコンピュータで解ける問題は、大体この一枚に集約されます。このような問題を解くAI開発を考えた時に、色で大体分けると、
他→部分的には競プロが活きるが、データサイエンスなどの別分野の方が重要
って感じになります。
現在の日本の多くの企業において、「AI開発!データサイエンス!」という流れが強くあり、データサイエンティストを多く採用している企業が多くあります。また、「DX」というキーワードもバズっており、こちらも取り入れている企業が多いです。
この2つについては様々な見方がありますが、僕の視点から見ると、企業が識別・集計・連結をさせた上で、扱えるデータや判断材料を増やすという取り組みに見えます。
AtCoderで扱う殆どのアルゴリズムは10年以上前に作られたものであり、決して新しい技術ではありません。ですが、様々なデータが収集され、さらにデータサイエンスの発達により、識別可能なものが増えた今、本来解くべき問題は急増しているはずです。ですが、アルゴリズムを扱うエンジニアは各企業に増えているわけではなく、これらの課題を適切に発掘・解決できていない会社が殆どである、というのが現状だと思っています。
データサイエンスやDXの部署があれど、コンピュータで解ける難題を包括的に解消できる組織を用意出来ている会社は少ないです。「AI」の名を関した組織でも、扱うのは機械学習のみ、というような企業がたくさんあります。
僕としては、やはりAtCoderは競技やゲームとして楽しんでもらいたいところがあります。ですが、それを全力で楽しむためには、罪悪感のない環境を作ってあげることが大切だと思っています。例えば、テレビゲームは楽しいですが、1日8時間もプレイをすると、「こんなことしてていいのかな……」ってなってきますし、純粋に楽しみづらくなってしまいます。
AtCoderユーザの力が活きる企業はたくさんあります。僕自身が中心となり、AtCoderユーザを率いて、日本最大の企業の中で、アルゴリズムグループを活躍させることで、アルゴリズムの力、AtCoderユーザの力を証明できると考えています。
これが成功すれば、様々な企業において、アルゴリズムを含めた組織作り提案ができるようになると思います。現状は採用における母集団形成のみを担当しているAtCoderが、組織作りから人材集め、社内での運用まで扱えるようになれば、ビジネス的に大きな成長も出来ると思いますし、そうしたらまた新たなコンテストを始められるかもしれません。
トヨタchokudaiとしての発信もしたいのですが、そちらは社長じゃないのであんまり好き勝手出来ません。とても楽しくお仕事が出来ている、ということだけ発信しておきます。
色々出来ていて喋りたいこともたくさんあるので、そうした場が用意出来ればいいな、と考えています。