「Obsidian」でノートを作るときの考え方とは? ~デイリーノートの活用と、PKMとしてのノート術 | gihyo.jp

 
前回までの記事で、Obsidianの基本的な設定は完了しています。あとは、ノートを自分の好きなようにMarkdownで書いていけばよいのです。
しかし、ノートを書くといっても、何から手をつければよいのかわからない人が多いでしょう。
ノートの書き方は人によって違ってよいのですが、先人が残してくれた知恵がいくつか公開されています。その方法と合わせて、私がノートを作るときの考え方を紹介します。

デイリーノートを使う

Obsidianではじめてノートを作成する人に対して、私がおすすめしているのは前回の記事で紹介したコアプラグインの「デイリーノート」を使う方法です。
デイリーノートとは、名前の通り毎日のノートのことです。初期設定のままで設定を変更していなければ、デイリーノートのボタンを押すだけで、「⁠YYYY-MM-DD」形式のファイル名で、保管庫として指定したフォルダの直下に当日のノートが作成されます。
なお、ファイル名や保存場所を変更するには、「⁠設定⁠」⁠→「⁠デイリーノート」を開き、書式や場所を変更してください。

当日の作業を記録する

デイリーノートを使うメリットは、ノートを作るときにファイル名を考える必要がないことです。つまり、「⁠ノートが雑記のようになってしまって、ファイル名に悩む」という状況がなくなります。
このノートに、当日のメモや作業内容などを記録していきます。私の場合は、朝の段階で当日に取り組む予定の作業を箇条書きのチェックリストの形式で書き出します。
Markdownで箇条書きのチェックリストを作るには、行頭を次のように表現します。
Obsidianでは、標準でCtrl+L(Command+L)にチェックリストのホットキー(ショートカットキー)が割り当てられています(⁠「⁠設定⁠」⁠→「⁠ホットキー⁠」⁠→「⁠チェックリストをトグル」から変更することもできます⁠)⁠。
このため、Ctrl+Lを押すだけでチェックリストを作成できます。そして、作業が完了したら、もう一度Ctrl+Lを押すとチェック済みにできます。
この方法でタスクを記録すると、Calendarプラグインを入れていれば、カレンダー形式の日付の下に「○」や「●」の記号が表示されます。「⁠○」のときは当日の作業が残っていることを意味し、「⁠●」だけになるとすべての作業が完了したことを意味します。
作業に取り組む時間が決まっている場合は、次のように開始時刻を書いておく方法もあります。
こういった書き方をしておくと、Obsidianの「Day Planner」プラグインを導入することで、タイムライン形式の表示が可能なメリットもあります。
また、Obsidianの「Reminder」プラグインを導入して、直前に通知する方法もあるでしょう(パソコンで通知を許可すると、指定した時刻に通知してくれます⁠)⁠。
Reminderプラグインで通知するときは、次の最終行の右端のように、アットマークに続けて通知する時刻を指定します。
これによって、いつ何をしたのか、作業の記録をノートに残すことができるようになりました。会社によっては週報や月報などを作成することがありますが、こういった記録があればふりかえることを支援できる可能性があります。
これだけなら、カレンダーアプリやタスク管理アプリでも十分だと感じるかもしれません。しかし、ObsidianはMarkdownが使えるので、このデイリーノートにいくらでもメモなどを追加できます。当日に思いついたことを、タイトルもつけずに記録しておけるのは便利です。

それぞれの作業内容とリンクする

上記のデイリーノートだけであれば、通常のMarkdownエディタでも十分です。日付をファイル名にしたテキストファイルに記録しておくだけでもよいでしょう。
Obsidianを使うメリットは、第1回で紹介したように「ノート間をリンクできる」ことです。そこで、作業内容のタイトル部分をリンクとして作成します。
つまり、次のように作るのです。
こので囲った範囲はウィキリンクと呼ばれ、Obsidianの保管庫にある他のノートにリンクできるのでした。
そして、リンクをクリックすると、その名前でノートが作成されます。上記の場合、「⁠Obsidian記事(第3回)作成.md」や「○×システム要件定義.md」といったファイルが作成されます。
そして、それぞれのノートにもう少し詳しい内容を追加していきます。たとえば、「⁠Obsidian記事(第3回)作成.md」を開いて、次のような内容でノートを作成してみましょう。
このように、実態はただの箇条書きのノートです。
しかし、翌日にも、この記事に関する作業をしたとすると、翌日のデイリーノートからも、このノートにリンクが張られます。そして、このノートのバックリンクを見ると、この作業をいつ行ったのかがわかります(下の図の右端⁠)⁠。
さらに、このノートから「Obsidian記事.md」というファイルにリンクしたとします。当然、第1回、第2回のノートからもリンクします。これによって、次の図のようなリンクができあがるのです。
このように、ノート間のリンクがつながっていき、一方向のリンクだけでなくバックリンクも調べられるのはObsidianの魅力です。

前日と翌日に移動するホットキーを設定する

デイリーノートを書いていると、前日や翌日の作業内容を確認したくなることがよくあります。Calendarプラグインで日付をクリックして移動することもできますが、ホットキーを設定しておくと便利でしょう。たとえば、「⁠Ctrl+←」を押すと前日に、「⁠Ctrl+→」を押すと翌日に移動する、といった設定が可能です。
「設定⁠」⁠→「⁠ホットキー⁠」⁠→「⁠デイリーノート:前日のデイリーノートを開く」や「デイリーノート:翌日のデイリーノートを開く」を設定するとよいでしょう。

PKMとしてのノート術

ここまでは、デイリーノートを起点として、さまざまなノートにリンクする方法を紹介しました。では、どれくらいのサイズでノートを分けて、それぞれをリンクすればよいのでしょうか?
第1回で紹介したように、Obsidianは「PKMツール」と呼ばれることもあります。PKMは「Personal Knowledge Management」の略で、直訳すると個人の知識を管理するためのものです。
このような知識を管理する考え方として、さまざまな方法が提唱されていますので、簡単に紹介します。

Evergreen Notes

多くの人はノートを作っても、そのときの記録を残すためにしかノートを使いません。せっかく書いたのに、それを見返すこともせず、死蔵してしまうのはもったいないものです。
そこで、過去に作成したノートも、一度作成したら終わりではなく定期的に見返して追記するという考え方がEvergreen Notes(日本語ではそのまま「エバーグリーンノート」と書かれます)です。これは「ずっと使える」ことを意識した「育てる」ノートを作ることを意味します。常緑樹において常に緑色の葉が生い茂っているように、いつ見てもよい状態のノートを作るのです。
思いついたことをノートに書くときは、思考を止めないように思いつくまま文字にします。そして、文字になったものを、あとから見返して整理していくのです。
こういった考え方でノートを作成するために、エバーグリーンノートでは次の5つの原則が挙げられています。
それぞれを日本語に訳すと、次のようになります。
  • エバーグリーンノートは原子的であるべき
  • エバーグリーンノートはコンセプト指向であるべき
  • エバーグリーンノートは密にリンクする
  • 階層的な分類法より、連想的なオントロジーを優先する
  • デフォルトで自分のためにノートを書き、読者を無視する
3つ目の「リンクする」ことや、4つ目の「階層的な分類より連想的」はObsidianのリンクとバックリンク、タグといったものが適していると想像できます。そして、最後の「自分のためにノートを書く」のも自分用に使うノートとしてローカルで動くObsidianは最適でしょう。
残るのが最初の2つです。1つ目の「原子的」とは、1つのノートに1つのことだけを書くことです。2つ目の「コンセプト指向」とは、ノートを作成する単位を「概念」で考えることです。これらは次の項で紹介する「Zettelkasten」のところで紹介します。
エバーグリーンノートで大切なのは、一度作ったノートを後からどんどん変更することです。自分の考えが後から変わることもあるため、時間の経過とともに自分が考えたことを追記し、書き換えていきます。

Zettelkasten

ドイツの社会学者であるニクラス・ルーマン氏の提唱した方法が Zettelkasten(ツェッテルカステン)です。「⁠Zettel」はメモ、「⁠kasten」は箱を意味する言葉で、紙に書いたメモ(カード)を箱に入れて知識を管理する考え方です。
Zettelkastenには多くのルールがありますが、基本的な考え方は次のようなものです。
  • 1枚のカードに1つの概念を書く
  • 自分の考えを自分の言葉で書く
  • 関連するカードにリンクする
これは、上記のエバーグリーンノートで紹介したものと似ていることがわかるでしょう。ここでも「概念」という言葉が出てきました。エバーグリーンノートの「コンセプト指向」と同じです。
たとえば本を読んだとき、その「本」の単位でノートを作成すると、そこに書いたノートはその本にしか紐付きません。このような単位でノートを作成するのは簡単ですが、同じ概念が複数の本に出てきても、それがつながっていかないのです。
そこで、「⁠概念」の単位でノートを作成します。自分が思ったことを自分の言葉で書くことで、自分のアイデアをあとから追加できます。同じトピックに関する本を2冊読んだとき、「⁠概念」の単位でノートを作成しておくと、それらのメモを簡単にリンクして紐付けられます。
さらに、階層的にまとめるのではなく、リンクによって関連するものをつなげていくのです。これはObsidianが向いています。

LYTとMOC

Nick Milo氏によって提唱されているのが LYT(Linking Your Thinking)や MOC(Map of Content)です。上記のZettelkastenは紙のカードを使った考え方ですが、これに近いことをデジタル環境で使う考え方がLYTだといえるでしょう。
LYTは名前の通り、思考をリンクさせることです。エバーグリーンノートやZettelkastenでもリンクを紹介してきましたが、単純にリンクするだけでなく、「⁠ホームノート」や「MOC」を作る考え方です。
ホームノートは「毎日見るノート」のように起点となるノートのことです。ノートを大量にリンクしていくと、どこからでもスタートできますが、よく見るノートを順に辿るのは面倒です。
しかし、ホームノートがあれば、そこを起点にできます。さらに、書籍でいう「目次」に近いものを作るのがMOCです。Webにおける「リンク集」や「まとめサイト」をイメージしても良いかもしれません。

まとめ

このように小さな単位に分けて、それぞれをリンクしていく考え方でノートを作成すると、頭の中で知識がつながっていく印象を受けます。
そして、膨大なノートがあっても、欲しい情報をいくつかのリンクを辿るだけで見つけられるようになるのです。
Obsidianには「グラフビュー」というノート間のリンクを表現するプラグインが標準で用意されています。これを使うと、ノートがどのようにつながっているのかを確認できますので、いくつかノートを作成し、リンクしたあとで使ってみてください。
参考までに、以下の図は私が普段使っている保管庫でグラフビューを表示したものです。それぞれの点が個別のノートを表し、他のノートとどのようにつながっているのかを俯瞰して確認できます。カーソルを合わせると、そのノートのタイトルも表示されますし、タグなどで色をつけることもできるため、どのような種類のノートを多く作成しているのかを把握できて便利です。
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